毛布症候群
天川先生の方じゃない、と答える。
上履きを靴箱にしまう。
「カウンセラーの先生の方」
「中学だっけ?」
「そうそう」
だから駅前のケーキ屋さんに、と続けてマオの方を向いた。
全く違う方を見ている。
何を見ているのか、と同じ方向を見てみると羊佑がいた。
「……面倒くさそう」
「僕はこうなるの予想してたけどね」
「先に言ってよ」
「面白そうだったから黙ってた。おお、顔こわ」
こちらに気付いて羊佑が歩いてくる。あたしは顔を引っ込めて早めに靴箱を出ようとした。
「硝子」
はあ、と無意識に溜息が漏れた。呼んだのはマオじゃないことは分かっている。
足を止めたけれどふり返りはしなかった。