毛布症候群

天川先生の方じゃない、と答える。
上履きを靴箱にしまう。

「カウンセラーの先生の方」

「中学だっけ?」

「そうそう」

だから駅前のケーキ屋さんに、と続けてマオの方を向いた。
全く違う方を見ている。

何を見ているのか、と同じ方向を見てみると羊佑がいた。

「……面倒くさそう」

「僕はこうなるの予想してたけどね」

「先に言ってよ」

「面白そうだったから黙ってた。おお、顔こわ」

こちらに気付いて羊佑が歩いてくる。あたしは顔を引っ込めて早めに靴箱を出ようとした。

「硝子」

はあ、と無意識に溜息が漏れた。呼んだのはマオじゃないことは分かっている。
足を止めたけれどふり返りはしなかった。



< 103 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop