無糖バニラ
「ごめんね、教室戻ろう。続きは後で」


自分でそんなことを言っておいて、重大なことに気がついた。

この続きというと……。


――『俺のことだけ考えてろ』


店先でされたキスを……。


「う、うわぁぁぁあ!」

「えっ、ちょ、なに?」


頭を抱えて、廊下でいきなり叫び出したあたしに、仁奈が若干引きながら尋ねてくる。


「なんでもない……」

「そっちの方が怖い。なんでもないのに叫ぶとか……」


そして、ドン引き。
うん、分かる。


今度こそあたしたちは教室に向かった。


――『ごめん、このは』


唇を指先で撫でる。

去年のキスは、本当に夢だったのかな……。
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