無糖バニラ
「お前、どうせコロコロ転がるんだから」


そんな、人をボールみたいに。

スカートに細かく氷の粒が付いてしまって、手でパタパタと払い除けていると、翼は目の前で上着のパーカーを脱ぎ始めた。


「暑いの?だめだよ、こないだまで風邪引いて……」


止めようとしたら、翼は無視してあたしの腰に上着を巻いた。


「え、え?」


ついさっきまで翼が身に付けていたから、ぬくもりがまだ残っている。


「あの、翼、これ」

「行くぞ」

「わわっ!?待っ……!」


戸惑うあたしをよそに、翼はあたしの手をぐいっと引いて滑り出した。

あたしもつられて滑るけど、スイスイ進む翼に反して、今すぐにでも転びそう。
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