無糖バニラ
この状況がいたたまれなくて、何とか自力で立とうとしても、ツルツル滑って上手くいかない。


そんなあたしを横目に、翼はすっと立ち上がって、こちらに手を差し伸べた。


「ん」

「ありがとう……」

「へたくそ」


また言った!

いちいち憎まれ口を叩くのは、どうにかならないのか。


翼の手を借りて、腰を上げる。


「小嶋くんなら、優しく「大丈夫?」って言ってくれたのに」

「悪かったな、小嶋じゃなくて」


翼が、ムッと目を細めた。

そんなつもりで言ったわけじゃないんだけど。
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