無糖バニラ
「ううん、ありがとう。翼も、今日は優しい」

「は?」

「翼に無視されるの、一番辛いから」

「……」


手を貸してもらっても、まともに立つには時間がかかる。

さっきみたいにあまりお尻が冷たくないのは、翼が巻いてくれたパーカーのおかげ。

目の前から、翼があたしの両手をぎゅっと強く握る。

また引っ張ってってくれるのかな……。


顔を上げると、真っ直ぐな瞳と目が合って、すぐに顔を背けた。

あ、あれ……?

また、胸の音がおかしい。
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