無糖バニラ
翼は、こぶしで口元を隠して目をそらす。

翼の笑顔を間近で見たのは久しぶり。

一瞬だったけど……。


あたしは、自分が怒っていたことも忘れて、自然と口角を上げた。


翼はそんなあたしを少し見ていたけど、すぐに何も言わずに店の裏に行ってしまった。


「おかえりなさい、翼。あんた遅いのよ!このはちゃんに手伝ってもらってたんだから」


扉が閉まっていても、翼ママの高い声はよく響く。

しばらく何かをやり取りしているような声がしたあと、また同じ扉が開いて、エプロンをした翼が出てきた。
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