無糖バニラ
ドクンドクン、胸の音がうるさい。

これは、ふたりでいることがバレるのが怖いから?

翼のそばにいるから?

分からない。


翼の香りで、クラクラする。

呼吸をするのが難しい。


「んー、自分用に焼き菓子だけ買っていこっかな。すいませーん!すーいーまーせーん!」


ひとりがレジの前にやってきて、叫ぶ。

レジ台に乗っかるように体を前のめりにさせて、少し視線を落とせばあたしたちの姿が目に入るだろう。

頭上で、同じ学校の制服が揺れるのが見える。


「えー?本当にいないのかな。すいませーん!」

「はいはーい」


何度目かの呼びかけのあとで、翼ママが奥から姿を現した。
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