無糖バニラ
「お、追いかけてきたの!?」

「追いかけねーよ。お前が遅すぎて、歩いただけで追いついたんだろ」

「うそ!?」


運動は確かに自信のある方ではなかったけれど、歩いていた人に負けるなんて。

密かにショックを受けていると、翼が「あ」と漏らした。


「“お前”って呼ぶなって言ったんだよな」

「?」


言ったけど。


「このは」

「っ!」


真顔で呼ばれた名前の破壊力がすごくて、あたしはぱくぱくと口を動かすばかりで、声が出せなくなってしまった。
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