無糖バニラ
「だったら、あのキスは何だったの?」


翼が、目を見開いてあたしを見る。

自分の発言に気づいて、口を手で押さえた時にはもう遅かった。

い、言っちゃった……!


「キス?」


ここまで言ってしまえば、もうごまかしようがない。

あたしは覚悟を決めて、ぎゅっと両手にこぶしを握った。


「だ、だって、キスしたでしょ……、去年。あれは翼だったんじゃないの?」

「……」


翼はバツの悪そうな表情を見せ、すぐに顔を背けた。


「……夢でも見てたんだろ」

「な――」


ガチャッ、リンリーン。


忘れかけていたけど、ここは営業中のお店。

お客さんの来店に、言い合いは強制終了せざるを得なかった。
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