無糖バニラ
翼の唇、やわらかい。

唇で感じるのとは、また少し違って、ドキドキする。


「手、邪魔」

「あの、だから、まだあたしは小嶋くんの」

「……」


片手をドアからスッと離したから、あたしの言い分が受け入れられたのかと思ったけど、その手はあたしの目を覆って、視界を遮(さえぎ)った。


「えっ、なんで――」


その先の言葉は、奪われた。

暗い闇の中で、唇にやわらかいものが……。

先ほどまで、自分の手のひらで感じていた。
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