無糖バニラ
彼女といっても、小嶋くんは付き合ってるフリだと思っている。

それでも、あたしは卑怯な形で彼の気持ちを利用したから。

結局、大事な話もできず、今日もあの場から逃げ出してしまったし。

だから、ちゃんとする。

謝って、それからだ。自分のことを考えるのは。


部屋の扉に向かっている途中で、翼に手を引かれた。

眉を寄せて、ムッとしている。


「俺、言わなかったっけ?」

「え?」

「帰さないって」

「あっ……、待っ、つばさ」


背中が扉に押し付けられる。

両手で囲まれて逃げ場がない。

唇の前に手を出すと、やわらかいものが当たった。
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