無糖バニラ
あたしたちが教室に入ると、ワッと騒めきが起こったみたいに聞こえた。
それが、まさかこちらに向けられているなんて少しも考えなかったあたしは、目で小嶋くんを探した。
もう来てる。
自分の席に座って、一度あたしを見てからすぐに目をそらした。
胸に手を当てて、ごくんと息を飲み込んだ。
行かなきゃ。
足を踏み出して、近づく。
「小嶋く……」
「ねぇ、このは。これどういうこと?」
小嶋くんに話しかけようとしたあたしは、教室の前にいる女子に呼び止められ、足を止めた。
彼女が掲げるのは、自分のスマホ。
そこに写し出されたのは……。
「それ……!」
胸がどくんと大きく騒ぐ。
昨日の、あたしと翼。
駅前で……。