無糖バニラ
宙を舞っていたたくさんの白い紙が、次々と床に落ちていく。

これは先ほど、先生に運ぶのを頼まれたプリント。

翼が……。


「っ……、翼!翼、大丈夫!?」


やっと理解した。

翼が、あたしをかばってくれたんだ。


「翼!痛い!?痛くない!?保健室……っ、あたし絆創膏持ってない……、湿布?な、何か貼る!?」


パニックになってしまって、翼の顔をつかんで無理やり自分の方を向かせる。


「てか、うるさい」

「心配してるのに、ひどい……」


涙でにじんで、蜃気楼みたいに見える視界の中で、翼がハァーと大きく息を吐いた。


「今度こそ守れた……」


腕を強く引かれ、その場できつく抱きしめられた。
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