無糖バニラ
真っ赤に怒る顔が、悲しみを瞳に宿している。

近づいてくる手のひらの前に、バサバサと何枚もの白い紙が舞った。

目の前に大きな背中が現れて、それ以外見えなくなる。


そこからは、一瞬だった。


パンッ!と乾いた音は鳴り響くのに、少しも痛くない。


「あ……、芦沢くん……」


大きな背中の向こう側から、震える声が聞こえた。


甘い香りがする。

大好きな、バニラ。


「翼……?」
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