プリズム!
「まぁ…『お兄ちゃん』に、そこまで認めて貰えてるってのは凄く光栄なことだとは思うけど…。でも、冬樹に許可されるまでもない。ずっと俺が夏樹を守っていきたいって…そう、思ってるよ」

まるでその瞳に誓うように雅耶は夏樹を真っ直ぐに見つめて言うと、ずっと繋いだままだった夏樹の手の甲にそっとキスをした。

それに反応出来ず、真っ赤になって固まってしまっている夏樹に、雅耶は満足気に微笑むと。

「さて、じゃあ…行きますかっ」

そう言って、素早い動作で夏樹を横抱きに持ち上げた。

「わぁっ!」

突然のことに慌ててしがみついて来る夏樹に、堪らなく愛おしさを感じる。

「ちょっ…雅耶っ。オレ…歩くよっ…」

わたわた余裕のない様子に、雅耶は微笑みを浮かべながらも平然と言った。

「無理するなよ。足、結構()れちゃってるみたいだし、すぐに冷やした方が良い。保健室までこのまま運ぶよ」

そうしてゆっくりと歩き出した。



「ちょっ…待って…っ…。重いよっ。オレ…っ降りるからっ…」

夏樹は申し訳なさを感じながら控えめに暴れていた。

だが、雅耶は足を止めてはくれない。

「重くないよ。前にもこうやってお前を保健室に運んだんだ。だから大丈夫」

(いや、大丈夫どうこうじゃなく…っ…)

夏樹は顔を真っ赤にしながら、(なか)ばパニック状態だった。

これは、いわゆる『お姫様抱っこ』というヤツだ。

こんな風に雅耶に抱えられるのは、確かに初めてではないのだけれど…。
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