夏を殺したクラムボン



「なぁ、成海」



窪田の喉からひどく掠れた声が絞り出される。



「……殺されたんだよな。浜田」

「……うん」

「ノリが良くて、すげえ、いい奴、なのに」

「……うん。浜田はいい奴だった」



次々に涙を溢れさせる窪田とは対照的に、成海の表情は冷めていた。



成海の目には、世界がいつもより鮮やかに、そして何よりも無機質なものとして映っていた。



「オレ、殺してやりたい。浜田を殺したやつを」



窪田の制服は普段とは違い、首元のボタンまでしっかりと止められていた。



「……そう」



成海は返事をし、腕を組んで背もたれに身を任せ天井を仰いだ。白い天井には汚れ一つなく、死のあっけなさを実感する。



……人間は、すぐに死ぬんだ。



その時、子供のように喚く女子の泣き声が聞こえ、成海は窪田と同じ場所に目を向けた。



ホールの中央から少し離れた場所で女子数人に囲まれて、真木 莉央が床につくばい、泣きじゃくっていた。



「……あぁ」



窪田がひとりごちる。



「……真木、浜田が好きだったんだってな」



普段の聡明な彼女の面影はそこになく、莉央は狂ったように取り乱している。周りの女子は背中をさすって莉央を慰めているが、一向に効果はないようだった。



成海は立ち、周に歩み寄る。



< 16 / 116 >

この作品をシェア

pagetop