夏を殺したクラムボン



「浜田が死んでいたのは、T商店街の裏にある、夜は人気が全くない空き地。塾の帰りに浜田はよくそこを通っていたみたい。彼は全身をバラバラにされていて、抵抗した跡はなかった」

「それは知ってるけど……なんで葉月がそんなに知ってるんだ?」

「別に。……1人だと周りの声がよく聞こえてくるだけ」

「へえ」

「抵抗した跡がないってことは、警戒心を抱いてなかったってこと。多分浜田は犯人を知っていた。バラバラにされていたのは2通りの考え方があるけど……」



息を吸い、周は形の整った右手の人差し指と中指を立て、窓の外を見た。



「ひとつは、この街で小動物を殺している人物に殺されたか。もうひとつは、別人がその人物の犯行だと見せかけるために工作したのか。私は、同一人物じゃないと思う。

成海は確か、推理小説が好きだったよね。どっちだと思う?」



あぁ、と腑に落ちた成海は顔をあげた。



……ミステリーが好きだから、浜田も葉月も、僕に犯人捜しを持ちかけたのか。



そうしてしばらく考え込み、成海も窓外の青に目をやり、言葉を紡ぐ。



「……僕も同じ意見だけど」

「やっぱり?明らかにおかしいよね」




額に手の甲を当て、周は思考を巡らせた。



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