食わずぎらいがなおったら。-男の事情-
「香、最近変だった?」

目処がついてきた頃、武田さんに聞かれる。

「回ってなさそうでしたね」

それだけじゃないけど。真奈ちゃんとギクシャクしたせいだろうな。

ほんと俺、バカだな。

「あいつ、抱えこむだろ。できないとかなかなか言わない奴だし。くそ。俺がもっと早く気づけばな」

武田さんは悔しそうにしてる。



基本的に、開発部は雰囲気がいい。ミスをフォローし合う空気があり、責め合わない。

香さんのことも誰も責めてない。

それはそれで、改善されない気もするけどな。うっかりで起こっていいようなミスなのか、これ。






田代さんが戻ってきて、香さんを帰すという。

「俺近いから送っていきますよ」

「いや、タクシー乗せるからいい。電車に乗れるような状態じゃない」

イラッとする。その、自分のもんだと思ってる態度が気になるんだよ。




真奈ちゃんには、原因と改善策を出せとか、的確な指示を出してる。まず本人に考えさせる気だ。責められずにほっとかれるってのも、辛いから。

それに改善は絶対に必要だ。こんなエラーは起こる方がおかしい。防げるはずだ。最終的には、武田さんにどうにかさせるつもりらしい。



大きいところも細かいところも、よく見えてるなこの人。しかも人の扱いが上手い。

レベルが違うってのは、痛感する。そりゃ職場で比べられたら負けるよ。
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