初恋の彼が、割と重度のフェチ持ちでした
「な、なんで笑うの」

「いや、ごめんごめん。そういや、なずなは運動はいまいちだったよな。逆上がりもできなかったんだ?」

「うん。この身長で運動できないって、まるで詐欺のようだけど、運動神経はほんとにないよ。逆上がりも、たぶん自力でできたことは一度もない」

「そうなんだ? じゃ、手伝ってやるからやってみな」

そう言って柊ちゃんは今自分が逆上がりしたばかりの鉄棒をポンポンと叩いてみせた。


「え? いいよべつに……なんか恥ずかしいし」

「スカートじゃなくてズボンなんだしいいじゃん。ほら」

「うー」

なんでこんなことに。促されるとそのまま流されてしまう自分がいる。私は気づいたら、両手で鉄棒を握り、助走をつけようと集中していた。


「じゃあ、いくよ」

「うん」

「……いくからね」

「うん」

「……ほんとにいくからね」

「早く」

えいっ、と精いっぱいの力をこめて、地面を蹴って、足を空に向かって投げる。とはいえ明らかに低すぎて、逆上がりなんてほど遠い仕上がりだったのだけれど、柊ちゃんが私のお尻を支えてくれて、くるんと一回転することができた。


「逆上がりできてよかったな〜」

「……バカにしてるのは柊ちゃんじゃん。自力でできたわけじゃないし」

口を尖らせて文句を言ってみせる。昼間からこんなところでお尻を触られてちょっとドキッとしたのは内緒にしておこう。



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