その背中、抱きしめて 【下】



「ゆずが辛かったのは痛いほどわかってるけど、高遠くんのこと許してあげてね。ゆずを守るために内村さんとカレカノのフリするしかなかったんだよ。高遠くんの愛情だから」


「うん。…わかってるよ」


わかってる。

ちゃんと理解もしてるし納得もした。


なのに、喉に小骨が引っかかったまま取れないでいるんだ。


でもきっと時間がたてばスッと楽になるよね。

今はまだショックが癒えてないだけで、これから高遠くんと楽しく過ごせれば引っかかった違和感も取れるよね。




「そういえば明日のスポーツテスト憂鬱だねー」

さくらちゃんのため息で我に返る。

「あ!そうだ、スポーツテスト!!どうしよう!」


毎年4月恒例の全校一斉スポーツテスト。

走るの苦手なんだよー。


「ゆず、今年の垂直飛びは去年より記録伸びるんじゃない?」

「そんなことないよ。別にトレーニングもしてないし」

「ホラ最近男子に交じってゲームに参加してるじゃん?ゆずが現役の頃の中学女子のネットより25cmも高いネットでスパイク打ってるんだから、自然にジャンプ力ついてるんじゃない?黒人並みのバネだよね、ゆずは」


たしかに高校男子のネットでスパイク打つのってかなり大変。

私が腕を真上に伸ばした高さが198cm。

40cm以上飛んでやっとネットすれすれの高さ。

そこからさらに腕を数十センチ出さないとスパイクもブロックもできないから、たしかにジャンプ力はついてるかもしれない。



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