冷徹社長が溺愛キス!?
「どういうって……社長とその従業員だよ」
「そうですか? 今朝もエレベーターで“奈知”などと呼び捨てにされていましたよね」
「あれは……」
麻里ちゃんへの説明と同じことをしても、加藤くんにはたぶん、『何を言っているんですか。まったく理解不能です』とでも言われておしまいだろう。
「非常に怪しいですね」
加藤くんは、今度はメガネのブリッジを人差し指一本で引き上げて、鋭い目を私に向けた。
「ねぇ、加藤くん、社長のことはひとまず置いておいて、もしかして加藤くんって奈知のことが好きなの?」
……え? 加藤くんが……私を……?
麻里ちゃんが突拍子もないことを言い出した。
ううん、ありえない。
いつも小馬鹿にされているし、好意を持って接してくれているとは到底思えない。
「沢木隊員、いったいどうしたらそのような思考が導き出されるのですか? 勘違いも甚だしいです。私が、このとろくて鈍い雨宮さんを好きになるはずがないでしょう」