冷徹社長が溺愛キス!?

「そう? だって、顔を合わせれば奈知のことをからかうし。それって、好きの裏返しじゃないの?」

「僕を小学生と同列に考えるのはやめてください。本当にいい迷惑です」


ほらね、麻里ちゃん。
そんなはずは絶対にないのだ。
加藤くんは、憤慨しきりという様子だった。


「ところで、奈知」

「ん? なぁに?」

「宿題って何なの?」


今度は、麻里ちゃんの話の矛先が私に向いた。


「それはその……しりとり……」


小さい声で答える。


「しりとり? なにそれ」


麻里ちゃんは顎を突き出して噴き出した。


「山小屋で暇つぶしで始めたんだけど、それが私で止まってて……」

「いやはや。雨宮さんがしりとりをしていたというのは納得できますが、社長まで一緒になってそのような子供だましのような遊びを」


私がボソボソと説明を加えると、加藤くんは呆れかえってしまった。

でも、子供だましで片付けられるほど易しいしりとりではなかったのだ。
それを力説したところで、加藤くんには鼻先で笑われそうだからやめておくけれど。


「社長まで雨宮さんの毒に侵されてしまったなんて。この先、うちの会社は大丈夫でしょうか」

「ちょっと加藤くん、それはひどいんじゃない? 奈知の毒なんて」

「沢木隊員も気をつけたほうが良さそうですよ」


加藤くんは真顔で麻里ちゃんを諭したのだった。

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