冷徹社長が溺愛キス!?

◇◇◇

電車に揺られること一時間半。
私は実家のある房総へと帰ってきていた。

ゴールデンウィーク初日というだけあって、電車も道も大混雑。
特にここ房総は、潮干狩り目当ての観光客が溢れていた。

ゴールデンウィークだというのに、悲しいことに何の予定もない私。
対して麻里ちゃんは、桐谷さんと温泉へ行くんだと楽しそうに話してくれた。
ついでに言っておくと、加藤くんはグアムだかサイパンへ行くそうだ。
友達となのか一人旅なのかは、結局最後まで教えてくれなかった。
そこまで隠す理由はいったい何なのか。


「はぁ~。やっぱり実家はいいなぁ~」


掃き出しの窓を大きく開け放したリビングは、遠くから漂う潮の香りが、ここは実家だということを実感させる。
三人掛けの大きなレザーソファーに体を伸ばして横になっていると、ひとつ年下の妹、美優(みゆう)が「だらしないなぁ、おねえちゃんは」と言いながら、私の足をパシッと叩いた。


「いいじゃないのー。実家に帰って来たときくらい寛がせてよー」

「おねえちゃんは、アパートでだっていつも寛いでるでしょ」


……確かに。

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