冷徹社長が溺愛キス!?

私の謝罪の声は聞こえているのか、いないのか。
社長は排水溝の隙間に指を入れ、それを持ち上げようとする。
しかし、何年も開けたことのなさそうなそれは、ピタッとはまったままビクともしない。


「くそっ、動かないな」


何をするつもりなのか、社長は立ち上がると待たせたままだったタクシーの助手席の窓をコンコンと叩いた。
パワーウィンドウが開けられる。


「どうされましたか?」

「何か工具類を持っていませんか?」


社長が尋ねる。


「……いやぁ、持ってないですねぇ」

「そうですか。分かりました」


運転手とのやり取りを終えると、社長は左手を腰に当て、同情的な表情で首を横に振った。


「無理だ。落ちたカギは諦めろ」

「えっ……」


諦めろって……。
それじゃ、私はどうしたらいいの……?

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