冷徹社長が溺愛キス!?

シーツにゆっくりと体を沈め、毛布を被った。
ほのかに香ってくる社長の匂い。
それは、あのムスクの香りだった。
社長に抱き締められているような錯覚に陥って、ひとり鼓動を高鳴らせる。

それとは別のところで三木専務のことが過り、チリチリと胸が焼けつく思いがした。
ふたりがこのベッドで抱き合っている様子を勝手に想像して、息苦しさに頭をブンブン振る。

もう、誤魔化しようもなかった。
私、速水社長のことが好きなんだ。
そうはっきりと自覚した。

そして、絶対に実らない恋だということも。

ギュッと目を閉じたところで、眠気の“ねの字”も出てこない。
それどころか、社長のベッドに寝ているという現実が、私の頭をどんどん目覚めさせてしまう。
彼の香りにドキドキする反面、目を瞑れば、思い描きたくない三木専務とのシーンが浮かんでくる。

悶々とする中どうにも堪らなくなって、ベッドの上に起き上がった。

社長はどうしているだろう。
そう思い始めたら、じっとしていられなくなった。

ベッドルームのドアを数センチだけ開いて覗くと、明かりの落ちたリビングから微かに寝息が聞こえてくる。
もう眠っているみたいだ。
ちょっと寝顔を見るだけ。
忍び足で社長が寝ているソファへ近づき、その場に腰を下ろした。

ソファから落ちかけている毛布を掛け直す。

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