冷徹社長が溺愛キス!?
静かにドアを開けて中の様子を覗き見る。
ベージュの絨毯が敷き詰められたそこは、片側の壁に書棚、中央には黒いソファーセット、出入口と真向いの一番奥に社長用のデスクがあった。
入社したての頃の見学で、ドアから見せてもらったときと変わりはないように思えた。
「失礼します」
誰にというわけでもなく小さい声で断りを入れ、足を踏み入れる。
初めて入る上、そこは社長室。
わけもなく緊張してしまう。
私のうしろでドアがパタンと閉じた音でビックリしてしまった。
防音のために壁を厚くしているのか、外の音が一切せず、やけに静かだ。
どこに置いたらいいだろう。
やっぱりデスクかな。
何ヶ所か迷ったあと、デスクの隅のほうに置いた。
社長が出社する前に出てしまおう。
トレーを小脇に抱え、ドアへ向かおうとしたときだった。
勢いよく開いた扉から、社長が姿を現した。
誰かが中にいると思わなかったのだろう。
私を見てギョッとして、「――脅かすなよ」と小さく息を吐いた。
違う意味で、私もドキッとする。
「すみません……。おはようございます」
ひと言謝り、遅れて朝の挨拶をする。
社長は中に足を進めて、私を通り過ぎながら「おはよう」と返してくれた。