冷徹社長が溺愛キス!?

「いや」


社長が短く答えるそばで、私も首を横に振る。
私は、専務の顔も見られなかった。


「あの……私は失礼します」


社長に頭を下げ、専務の脇をすり抜けるときにも彼女に頭を下げ、逃げるように社長室をあとにした。

エレベーターまで走り、到着したその中に入ると、そこでやっと大きく深呼吸をする。
心臓の音がやけにうるさい。

三木専務は勘違いしてしまっただろうか。
時間にすればそれほど長くはないが、私なんかが社長室に入り浸っていたことをどう思っただろう。
私が部屋を出たあと、ふたりの間にはどんな会話が交わされただろう。

そして、それよりも気になったのは、社長が言いかけた言葉だった。

何を言いたかったのか。
何を言おうとしていたのか。
そのときの社長の顔ばかりが浮かんで、心ここにあらず。

うっかりしてエレベーターで一階まで行ってしまうのだった。

< 194 / 272 >

この作品をシェア

pagetop