冷徹社長が溺愛キス!?

「おい、なんだよ、大丈夫か?」


彼は急に具合でも悪くなったと思ったか、心配そうに私の顔を覗き込む。
静かに大きく息を吸い、溢れ出す気持ちと同時に告げた。


「……“すき”です」


しりとりに乗じてしか、私の思いは伝えられない。
許されない気がした。

社長は一瞬目を見開いたあと、何も言わずに私を見つめた。
その表情からは、何も読み取ることができない。
ただ、私がそんなことを言ったくらいで、社長の心を揺さぶるほどの威力はないことは分かっていた。

無言のまま、空気がピンと張りつめる。
さっきからうるさいくらいに暴れる鼓動の振動が、空気を伝わって社長にも聞こえてしまいそうだ。


「奈知、こ――」

「おぉ、なっちゃん、目が覚めたようだね」


社長が口を開くと同時に、病院には不釣り合いなほど大きな声がしたかと思ったら、久万さんが病室に現れた。
顔いっぱいの笑みを浮かべながら、社長と私の間に立った。
久万さんもあの会場にいたわけだから、一部始終の目撃者だ。

< 211 / 272 >

この作品をシェア

pagetop