冷徹社長が溺愛キス!?

でも、この声……?
聞き覚えがあるような、ないような。

私の記憶とは裏腹に、胸がなぜか高鳴る。
そして、お相手が私の前に腰を下ろしたときには、心臓が口から飛び出してしまうんじゃないかと思うほど驚いてしまった。


「しゃ、社長!?」

「おう、奈知。待たせて悪かったな」


社長は別段驚く様子もなく、目の前に置かれていた冷たい麦茶を飲み干した。
そして、私を見て目を丸くしたあと、「ほぉ」というように小刻みに頷く。
着物姿の私を見て驚いたのかもしれない。


「純、その口の利き方はないだろう」


お父様にたしなめられて、彼が素直に姿勢を正す。


「お電話では何度かご挨拶させていただいておりますが、速水純です。初めまして」


この場がお見合いにはとても思えない、フランクな挨拶だった。

ところで、パンチさんは?
どういうこと……?

私が会場を間違えたということは、たぶんない。

それじゃ……?
あまりの事態に、思考回路がショートしてしまった。

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