冷徹社長が溺愛キス!?

自己紹介する間もなく、パンチさんのお母さんが誉めてくれた。
着物を着ているから、いくらか割増しで良く見えるのだろう。
しかし、お世辞と分かっていても、誉められて悪い気はしない。
滅入っていた気分も軽くなったような気がする。


「雨宮奈知と申します」


娘が誉められて恐縮する両親の隣で、名乗りを上げた。

俯かせていた顔を上げ、パンチさんの御両親の顔をそこで初めて見る。
お父様のほうは白髪交じりではあるものの、豊富な髪をオールバックに決め、目鼻立ちのすっきりとした顔でガッチリとした体型をしていた。

お母様は私同様に着物姿で、華奢な感じのする優しそうな美人だ。
穏やかな目元は、写真で見たパンチさんと似ていなくもない。

ただ、ふたりの容姿から息子の容姿を想像して、パンチさんを思い浮かべられるかといったら、答えはノーだ。
少し違う系統のような気がする。
鳶が鷹ならぬ、“鷹が鳶”という逆もあるのかもしれない。

そんなことを考えながら、居心地が決して良いとは言えない場に大人しく座っていると、スーッと後ろの戸が開く音がした。


「お待たせして申し訳ありませんでした」


パンチさんが到着したようだ。

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