冷徹社長が溺愛キス!?
そんな分かりきったことを聞くのかと言いたいのか、その目に戸惑いの色が滲む。
「俺は――」
彼が何かを言いかけたところで、社長室のドアがノックされた。
「失礼しま――って、ごめん」
ドアを開けてすぐのところに私たちがいたものだから、三木専務は口もとに手を当てて驚き顔だった。
咄嗟に社長が私からパッと離れる。
「……いや」
微妙な空気に包まれた。
「で、何だ」
社長はデスクに向かいかけながら、専務に尋ねる。
「午後のプレゼンの資料が提出されたから持ってきたのよ」
持っていたクリアファイルを社長へ手渡した。
「サンキュ」
「あまり乱暴なことをしたら嫌われちゃうわよ?」
悪戯に笑う専務。
社長は私へ一度視線を投げかけたあと、専務を睨み返した。
「……あの、私はこれで……。失礼します」
そこに留まっているわけにもいかなくて、そそくさと社長室から退散したのだった。