冷徹社長が溺愛キス!?
立ち止まると、私まで静まり返った山の一部になってしまったようだった。
不安に立っていられなくなり、その場にうずくまる。
もうここから帰れないかもしれない。
体ごとすくわれるような寂しさに泣きそうになったときだった。
ガサっという物音にパッと顔を上げる。
「おい、こんなところで何してんだ」
「……しゃ……ちょう?」
そこに立っていたのは、怪訝そうに顔をしかめた速水社長だった。
寄りによって……と思ったが、窮地にわがままを言っている場合じゃない。
「コースからだいぶ外れてるぞ」
きっと、もう誰にも会えない。
会えるとしたら、私をエサと見なした動物くらい。
明日の朝には、私かどうかも分からない姿になってしまう。
そう思っていただけに、速水社長を見ただけで胸がいっぱいになる。
よかった……。
込み上げてくる安堵感が目の奥を熱くする。
「って、おい! なんで泣くんだよ!」
安心したら急に泣けてきたのだ。
社長は目を見開きながら私に近づいて来た。