冷徹社長が溺愛キス!?
「あ、はい……お願いします」
背中を丸めて頭を下げた。
とにかく、ひとりにならずに済んでよかった。
私の前を歩き始めた社長の背中を追いかける。
ところが、足の長さが違うせいか、どんどん離れていくその背中。
少しでも気を緩めたら見失ってしまいそうになる。
社長はまるで、頂上へのナビでも搭載しているかのように、迷うことなく突き進んだ。
「……あの……速水社長……待ってくだ……さい……」
慌てて追いかけるから、息が追いつかない。
途切れ途切れに発した言葉は、山の空気に呑まれていく。
それでもなんとか社長が向かったであろう方向へ歩いていると、大きな木の陰から何かが不意にぬっと現れた。
「――ひっ!」
クマでも出てきたのかと悲鳴を上げそうになってしまったが、それは社長だった。
「どれだけ歩くのが遅いんだよ」
「す、すみま……せん……」
謝ることで精一杯。
驚いて一瞬呼吸困難になったあとだけに、さらに息が苦しい。