冷徹社長が溺愛キス!?
「だろうな」
社長がフンと鼻を鳴らす。
「この山小屋にすら辿り着かないで、クマに食われていたかもな」
「えっ、クマが出るんですか……?」
「かもな」
そういえば、そんな立て看板を目にしたかもしれない。
朽ち果てて、字も消えかかっていたけれど。
クマと鉢合わせしたシーンを思い浮かべて、ブルっと身震いする。
今、ここに自分が無事でいることに、強く感謝した。
「でもまぁ、クマのほうも奈知のことは遠慮するんじゃないか?」
「……どういう意味ですか」
私が唇を尖らせると、速水社長はククッと笑った。
さすがにそれはひどい言い様だ。
「まぁいいから、これでも飲め」
そう言いながら彼が紙コップを差し出す。
いったい何が『まぁいいから』なのだ。
ところが、「ココアだ」と言われて、すぐに気持ちはそっちへ向く。