冷徹社長が溺愛キス!?
但し、それは社長が私の腕を支えてくれているから。
たぶん、手を離されたら角度が変わって、こうはいかない。
「すごいですね」
嬉しさいっぱいに社長に振り返ると、思いのほか彼の顔が近くにあって、金縛りにでもあったかのように体が硬くなる。
少し驚くような表情をしたあと、社長の顔に戸惑いが滲む。
顔を逸らせばいいのに、なぜかできない私。
社長と間近で合った視線は、複雑に絡まった糸のようにガッチリと私を捉えた。
鋭さを秘めながらも優しい眼差しを前にして、瞬きができない。
息が詰まって苦しくなったときだった。
パチンと大きく鳴った音が、私たちの間にあった緊張を解いた。
ふたり揃って、音のしたほうへ目を向ける。
暖炉の薪が弾けたようだった。
さっきより幾分か、火の勢いが弱まった気がする。
社長もそう思ったのか、暖炉に近づき、そばに置いてある薪をくべた。