冷徹社長が溺愛キス!?
◇◇◇
ゾクッする寒さを感じて、薄っすらと目を開ける。
そうだ。山小屋だったんだ。
変な角度で壁にもたれていたのか、首が痛い。
そこをさするようにしたところでハッとした。
――違う。壁なんかじゃない。
私のすぐ隣には、まだ寝息を立てる速水社長が座っていた。
私は、彼にもたれて眠っていたのだ。
昨夜は確か、社長が薪をくべるのを眺めているうちにいつの間にか眠ってしまったんだ。
私は自分のジャケットを着込んだまま。
彼のジャケットは私たちに掛けられていた。
たぶん社長は、ふたりで寄り添っていたほうが暖かいだろうと私にくっついていたんだろう。
そうだと分かっているのに、妙に動揺する私の心。
彼のジャケットから再びムスクの香りが漂って、なんだか気持ちが落ち着かない。
社長を起こさないようにそこからそっと抜け出し、ジャケットを彼に掛け直した。
寒くて当然だ。
暖炉の火が消えていた。
すぐそばに薪が置いてあったものの、私に火は起こせそうにない。
目覚めた私はいいとして、これじゃ、社長は寒いだろう。
そういえば、あれを持って来ていたはず。
自分のリュックを漁り、カイロを取り出した。