冷徹社長が溺愛キス!?
「アホか!」
荒げた声に顔だけで振り返ると、社長が苦虫を噛み殺したような顔で立っていた。
彼が私の腕を掴んでくれたおかげで、この急斜面を転がり落ちなくて済んだのだ。
「……すみません」
「ったく、お前というヤツは、どこまで手のかかる女なんだ」
私を安全な場所まで引っ張ると、社長は腰に両手を当てながら大きな溜息を吐いた。
手をかけさせているつもりはないんだけど……。
効率重視の社長からしたら、私のやることなすことすべてが、彼の許容範囲を逸脱しているんだろう。
「本当に申し訳ありません……ありがとうございました」
深く頭を下げる。
「で、これは?」
社長の声に顔を上げる。
すると社長は羽織ったジャケットの前を開いて、胸を指差した。
「カイロです」
「そんなことは分かってる」
眉間に皺を寄せる。