いつかそんな日がくればいい。【短】
「おっかしいなぁ〜。さっき友達がさ、神社の裏手辺りで黒崎君が怪我した女子とキスしてたって騒いでたのよ」
ドクンと俺の心臓が跳ねる。
でも、それは今聞いた話がショックだったからじゃなくて、白田さんがそれをどう受け止めたのか、不安になったからだ。
案の定、白田さんは心ここにあらずといった表情で、少し開かれた唇が微かに震えている気がした。
「絶対水樹だと思ったんだけど、水樹怪我なんてしてる様子ないし、黒崎君とも一緒にいないんじゃ、その子の見間違いかぁ〜!」
「なんだぁ〜!」と言って笑い合う二人。
見間違いなんかじゃない。
その子が見たのは確かに黒崎で、その怪我をしていたという相手は、間違いなく吉川だ。
吉川の怪我は、階段から滑り落ちた時に出来たものだろう。
あー…まずいな、と思う。
失恋したばかりの好きな相手が、
まだ、諦めることすら出来ていない相手が、
他の子と、キスをしているなんて。
神様はつくづくこの子に優しくないな。
そう思う。
せめて、これを知るのが今日じゃなければ良かったのに。
せめて、もう少し時間が経ってからだったら良かったのに。