心音詩集 血液のラルゴ
想像だけの景色



知らない間に死んでいった人のことを
考えていた

それでも今ここにいるあなたが
いつか死ぬことが理解できない
この指と足、そこに触れている今が
血管を流れていた温かい血液が
もう永遠に戻らないなんてどうかしている

失わねば見えることのない景色の中で
立ち尽くしている人を見た

涙の意味を今から本当に知って
耐え難いこの空虚に身を投じられるのか
後ろから抱きしめてくれるその腕を
俺は持っていて、お前は持っていない
そのことがどんなことか
想像すると初めて寒気がした

そこにいて
そこに

立ち尽くすお前を慰めに行くのは
俺じゃないとわかっている
ただ、それを教えてくれたお前を
俺は抱きしめたいと思った
慰めるすべがないのに愛してるんだと
言ってしまえると思う
俺はそういうにんげんだから
それをわかっているお前は
きっと笑ってくれるはずだと
きっと





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