そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
「聡?いつまでやってるの?」

「母さん?」

「ごめんなさいね、亜湖さん。こちらのわがままを聞いてくださって。感謝します。でも、もうそのくらいにしておいてあげてください。ほら、待ちくたびれて、ずっとロビーで一人お待ちですよ」


「長井が?」


「ええ、それはもう、あなたが来てくれるってわかってから、本当に楽しみにしてらしたのよ。長井さんには、十分うちのために働いてもらいましたから、喜んでいただきたいの。調理場も気合が入ってましたよ。お部屋に、お戻りになる頃には、温かいお食事お持ちしますね」


「はい」


「それから、亜湖さん」
私は、呼び止められて振り返った。


「差し出がましいですけど。これは、おっせかいなおばさんとして、ひとこと言わせていただきますよ。
お仕事もよろしいですけど、ちゃんと彼に甘えてあげなさい。こっちへ来て、ほら、ロビーを見てごらんなさい、あなたに振られて、あんなにしょげてつまらなさそうにしてる」



私は、女将に言われてロビーが見える位置まで来た。

「長井?」

彼は、ロビーのソファに座って、退屈そうにしている。


「さあ、すぐに行ってあげて」

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