そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~
自宅から、みなとみらい地区にある会社まで20分とちょっと。

電車で通うと、一度乗り換えが必要だから、もうちょっと時間がかかる。


行きは下り坂を流れるように、風を感じて進んでいく。ペダルを漕がなくても、あっという間に会社に着いてしまう。

それでも、こんな風に一時間も早く出るのは理由があった。


この通りをまっすぐ行けば、海沿いの公園にほど近いカフェがある。そこで仕事モードに入る前に、一息つくのが何よりの私の楽しみだった。


カフェのドアを開けると、店のオーナーが声をかけてくれる。

「おお、亜湖ちゃん、いらっしゃい!!」

たぶん、この店のオーナーは、五十代。
髪に白いものが混じってるから。



「いつものでいい?」


「はい」

食欲はある?

ちゃんと、朝食べられる?
最近はそういわれなくなった。



3年近く通いつめた私は、立派な常連客だ。

ぼんやり景色を楽しむのに、ここは、海に近くて最高の場所だけど、駅から少し距離があるためか、駅近のコーヒーショップと違って朝は空いている。


なので、朝の営業は客が少ないし、店を開けてもたいして儲けはないはずだ。客が言うのもなんだけど。

それでも店を開けるのは、公園で散歩して来た朝の早い高齢者の常連さん達に、

散歩の途中で休むところが欲しいから、朝も店を開けてくれないかと、
頼まれれたからだよと、オーナーが言っていた。

そういうわけで、このカフェは、ずっと店を開け続け、それなりに続いた今は、朝の早い時間でも、店に客が入るようになっていた。


「亜湖ちゃんまだ、自転車で通ってるの?」


「はい」

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