そろそろ、恋始めませんか?~優しい元カレと社内恋愛~



ちょっとお節介かなと思うときもある。


オーナーとは、偶然この店に立ち寄って、知り合った。今でも、ここで食事をしてコーヒーを飲むというだけの間柄で、もとから知り合いという訳ではなかった。

オーナーは地方の大学に通うために家を出た娘さんのことを思うと、人ごとじゃないと私のことを心配してくれる。


見ず知らずの街で、もう一人お父さんがいるみたいだ。


知り合いでもない、朝食を食べに来るという女の子のことを、気にかけてくれるのはありがたい。


優人に振られて、3年前のどん底にいたときは、オーナーが私のために作ってくれた食事に勇気をもらった。だから、この場所は、私にとって大切な場所だ。



「は~い。亜湖ちゃんのスペシャルモーニング」こいう言われると、子供みたいで恥ずかしい。


オーナーは、ボリューム感たっぷりの卵のサンドウィッチとサラダの朝食、サイフォン式で入れた、おいしいコーヒーを用意してくれる。


しかも、スペシャルというだけあってこのメニューは、私だけのものだ。

オーナーは、私が一日の大半の栄養を、この店の朝食で取っていると知って、来るたびに少しずつ違ったメニューを用意しておいてくれる。


「亜湖ちゃんは、うちによく来てくれるね。試験に受かったっていうのに、うちの店が気に入ってくれて、こんなとこまで来てくれるんだ。こっちも頑張らなきゃ」


「だって、こんなの見せられたら、ほかの朝食、食べられないもん」

< 4 / 173 >

この作品をシェア

pagetop