じれったい
その日の夜。

夕飯を食べ終え、後片付けを済ませると、玉置常務が貸してくれた映画を見ることにした。

ＤＶＤをプレイヤーに入れて再生させると、ソファーに腰を下ろした。

「あっ、始まった…」

私はテレビの画面に視線を向けた。

何となく…と言うよりも、義務的と言った方が正解かも知れない。

玉置常務が貸してくれた映画『マイ・スイートホーム』の話が進むにつれて、私の目から涙がこぼれ落ちた。

飛行機事故で亡くなった姉の娘を育てることになった女性の姿を描いたヒューマンストーリーである。

なれない子育てや苦手な料理に奮闘しながら血の繋がらない幼い娘と向きあう主人公の姿に、いつの間にか私は心を奪われてしまっていた。

物語がラストシーンに差しかかった頃には、こぼれ落ちる涙を止めることができなかった。
< 46 / 273 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop