Ability world
第一節 『才能の始まり』
「んっ?」

笹谷 邦弘(ささや くにひろ)。大学2年生。顔は普通。背丈、体格も並み。勉強も中の中。スポーツも得意って訳でもなく、器用貧乏でなんでもそつなくこなす。
しかし、愛想はよく友達は多い。誰とでも話が合い、クラスや友達の輪でも中心にいることが多い。

学校から帰ろうとした彼は、駐輪場の自分の自転車のかごに、1枚の紙をみつける。


[才能売ります。]


なんの変鉄もなく、普通のB5用紙に黒字の明朝フォントでそう書かれている。

「なんだこれ。」
ふと疑問に思い、口に出る。もちろん普通の反応なのかもしれない。
これだけ広い駐輪場の、自分の自転車にピンポイントで紙が置かれていたのだ。他の自転車にはない。不思議に思っても仕方がない。なんの疑問も持たないのはむしろへんなくらいだ。

普通ならこんな現実味のない紙はイタズラと決め、丸めてポイしてしまうのだが、邦弘の脳裏を"噂"がかすめた。
大学でも流行りの都市伝説的なものだ。才能1つ1億円だとか、才能を売ると死んでしまうとか、今巷で流行っている噂話だ。
いつでも話題の中にいる邦弘はもちろん耳にしていた。
邦弘はオカルトなどを特に信じているわけでもないが、今回はこの紙に何か違和感を感じた。

何かを感じた。



< 1 / 3 >

この作品をシェア

pagetop