恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
「三神君のこと、よろしくね」
井上さんがカウンターから静かに声をかけてきた。
「……お会いするオケの方、皆さん同じことをおっしゃいます」
「定食屋のおばちゃんとか?」
「はい。花屋のお姉さんにも」
井上さんは微笑んだ。
「三神君のお母さん、うちのオケにいたのよ。定食屋のおばちゃんも、花屋のお姉さんも、もちろん私も、その時一緒に弾いてた。
医者なんて過酷な仕事してるにもかかわらず きっちりさらってくるから、どんなスーパーウーマンかと思ってた。
話してみると、ちょっと天然で面白い人だったなぁ。
旦那さんが亡くなってから、辞めちゃったけどね。
三神君が、意識してるのかしてないのか、私生活を犠牲にしてストイックにコンマスやってるのは感じてたから、普通に恋愛して、結婚して、家族を持てればいいなぁっていうのが、お母さんを知ってる私達の願いだったのよ」
私は胸がいっぱいになって、左手の指輪をじっと見つめた。