恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
圭太郎は、外のベンチに座っていた。
「圭太郎。つけたいもの、絞ったから、一緒に選んで?」
そう声をかけると、圭太郎は真っ赤な目をして私を見た。
「……綾乃があんまり幸せそうに笑ってるから、たまらなくなった」
「だって幸せだもの」
圭太郎は微笑む。
「……おいで。少し話そう」
私が圭太郎の隣に座ると、彼は遠くを見つめながら、静かに話し始めた。
「……父さんが亡くなった時のことは、混乱しててよく覚えていないんだけど、母さんが、父さんの手を握って泣いてたのは、鮮明に覚えてる。父さんの結婚指輪を撫でながら泣いてた。
さっき自分で指輪した時、それを思い出すのと同時に、今が幸せすぎて、怖くなった」
私はぎゅっと圭太郎の手を握る。
彼は私を見つめた。
時折見せる、寂しく、不安そうな表情。