恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
……言わなきゃ。
恥ずかしくても、言葉にして、伝えなきゃ。
彼がいつもそうしてくれるように。


「あの、今さらだけど、

…………私がいるから。

ずっとそばにいる。

幸せでいることに慣れて、幸せが怖くなくなるくらいに、幸せにする」


圭太郎の顔が歪み。
見られたくない、って言うように、私を抱きしめた。


「僕、こんなだよ? 重いよ? たまに情緒不安定になるよ?」

……ああ、かわいいなぁ。
母性本能をくすぐられるというのは、きっとこういうことなんだと思った。

私は圭太郎の大きな背中をなでる。

「今さら何言ってるの。前にも言ったけど、かっこ悪いところも含めて、圭太郎が好きだから、安心してよ。

それにね、完璧に見える圭太郎が、私にだけ弱いところを見せてくれるというのは、彼女としてなかなか優越感を感じるものなんだよね」

冗談めかしてそう言うと、圭太郎は腕に力をこめた。

「……こんなにできた彼女、やっぱり婚約指輪してもらわないと心配でたまらない」

「ははっ、何言ってんの。全然できてないし。

それに、……そんな心配は無用です」


かっこよくて
かわいいところもあって
ヴァイオリン上手くて
こんなにも私を愛してくれる男の人は、
世界中探しても
圭太郎以外にいない。


「ふふ。ありがと……」

かすれた声が、耳元できこえた。



婚約指輪、もらってあげる。
つけてあげる。
それであなたが喜ぶのなら。



……あーあ、私、
相変わらずベタ惚れみたいです。





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