恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
「本選、明後日の日曜日でしょう? 一般公開されるんだから、応援しに行ってきたら?」

私が言うと、圭太郎は複雑な顔をして、タンブラーに視線を落とした。

「……んー、……やめとく」

「私に気を遣わなくていいよ? 私 引越しの準備してるから、私の分まで応援してきてよ」

「ううん、そうじゃなくて……。
……コンクールは、ちょっと苦手」

最後は珍しく、消え入りそうな、小さな声だった。

圭太郎は、小さな頃からヴァイオリンのコンクールに出てた。
きっと、いい思い出だけじゃないんだろう。

私に聴けない曲があるように、圭太郎にも苦手なシチュエーションがあるのかもしれない。

「……ごめん」

「いいよ。綾乃が謝ることじゃない」


最近、圭太郎は、弱い部分を少しずつ見せてくれるようになった。

今のだって、いくらでも誤魔化せるのに、ちゃんと本当のこと言ってくれた。

信頼されてるんだと思えて、うれしい。

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