恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
「真っ先に削れて、金額大きい。どう? 削る気になるでしょ?」
「なるけど……、何?」
「今すぐ削る? 」
「……うん……、だから、何?」
「うん、って言ったね?」
……この逃げ道を塞ぐ感じ、覚えがある。
––––––「綾乃の家賃」
そう来たか。
「結婚前に、一緒に住むの……? それって会社的にどうなんだろう……」
「どうせ結婚するんだから、早く一緒に住んで会社の家賃負担を減らしなさい、って、人事総務部長が言ってた」
「な、な、何て……⁉︎」
うちの会社、独身者が実家から通えない場合、家賃補助が出るのだ。
私もそのひとり。
人事にまで根回し済んでるとは、ほんとにおそろしい男だ。
でも、会社はよくても、親が何て言うか……。
田舎だからそこらへんは保守的なのよね。
「綾乃のご両親は、明後日ご挨拶に伺う時に僕が説得する」
……この人の説得力は尋常じゃないことを知ってるので、何も言えない。
「綾乃は、結婚前に僕と住むの、嫌? 抵抗ある?」
……嫌じゃない。
もちろん一緒にいたいし、
圭太郎のこと独り占めしたいと思う時もある。
何よりも。
私が帰る時、圭太郎が、ものすごく寂しそうにするのはずっと気になってた。