恋色シンフォニー 〜第2楽章〜
玄関に姿を見せた圭太郎は、恥ずかしそうに、「こんばんは」と言った。
「段ボールいっぱいで落ち着かないだろうけど、まあどうぞ」
「お邪魔します」
……やっぱり、どことなく、元気がない。
晩御飯は、ハヤシライスに、チョップドサラダ。
冷蔵庫の残り物一掃メニュー。
言葉少なに食べ進めていると。
「……何もきかないの?」
圭太郎が視線を落とし、コロコロしたサラダをスプーンでかき混ぜながら、静かに言った。
どう返そうかしばらく悩み。
「……………………ごめん」
私の沈黙の末の謝罪に、彼は少し笑った。
「何で謝るの?」
「圭太郎なら、気の利いた励まし方ができるのにな、って思って」
「……綾乃は僕を買い被りすぎ。かっこつけてた僕もいけないけど、僕は、ほんとは、」
「かっこいいも悪いもないよ。
マリさんのこと、素直に喜べなくても、それは仕方ないことだと思う」
今日は、T国際指揮者コンクール本選だった。
【マリちゃん一位!】
設楽さんから短いメールが来た。
宛先には圭太郎も入ってた。
圭太郎から電話があったのは、それから少し後だった。